13 ダイバダッタ

ブッダを越えたかったお弟子さま ダイバダッタ

最初に、イエスにユダ、釈迦にダイバ、という言葉もあります。要するに裏切り者ということです。
ダイバダッタは、ブッダにとっては従兄弟、アーナンダの兄と言われています。
彼は、そんなに悪者だったのでしょうか。こんなお話が残されています。
先に話した、釈迦族のクシャトリア(王族)の若者たちがアヌルッダをリーダーとして出家しましたが、その中にダイバダッタもいました。ブッダの従兄弟として、純粋に道を求めていた頃だと思います。
いつからか、彼はブッダを隠居させ、自分が教団のトップに立ちたいと考えるようになりました。それは、ブッダと並ぶ者は自分しかいないという自負からです。
何度もブッダに隠居をすすめるのですが、願い叶わず、彼は色々な企みを計画するようになります。それは、ブッダをなきものにして、自分が教団のトップに立つということでした。

「教団の分裂」

長い修行の末、彼はようやく神通力を手に入れることが叶いました。その神通力を、マガダ国のアジャセ王子に披露し、王子はすっかり彼に魅せられてしまいました。
ダイバダッタは、王子の後ろ盾を得て、国中に自分をアピールし、自分の教団を作ろうと計画したのです。その結果、まだ出家して間もないブッダの弟子たち五百人の引き抜きに成功しました。ブッダの教団の分裂です。

ある日、ダイバダッタの教団に、サーリプッタとモッガラーナがやってきました。

「おお、ブッダの最上位の弟子二人が私の教団に来るではないか。彼らも私の考えを認めたのだ、ブッダの教団も終わりを告げようとしているぞ」

ダイバダッタは両手をあげて二人を歓迎しました。
そして、説法の座を二人に任せると、彼は「しばし休息する」と言って、横になったのです。

二人は、彼が寝入ったのを見ると、不思議な力、神通力を皆に見せ、

「さあ、ここで迷ってはいけない。ブッダのもとへ帰ろう。そして正しい教えを学ぼう」

と言って、五百人の弟子を連れて帰ったのです。
眼が覚めたダイバダッタは、驚きました。あたりは人影すらまったくないのです。
事の次第を知った彼は、歯噛みして悔しがりますが、時は既に遅く、しかも、ブッダの教団を分裂させたという大罪を犯した彼は神通力をうしなってしまうのです。

「ダイバダッタの計画」

怒りがやまないダイバダッタは、アジャセ王子と手を組んで、ブッダをなきものにして、教団の乗っ取りを企てます。

「王子は父王を殺し、私はブッダを殺し、新しい世をつくりましょう」

と、そそのかされた王子は王を牢に閉じ込めて殺し、新しく王位に就きます。そして、いよいよ、ダイバダッタはブッダを殺そうと企みます。
歩いていくブッダにあてようと、大きな岩を崖の上から落としたのですが、岩は崖の途中でバラバラに崩れてしまい、ブッダの足の指だけを疵つけてしまいました。

この時、ダイバダッタは、仏の身体を傷つけ、血を流どうにかして、ブッダをなきものにしたい彼は、王に願い出て、巨大な象を借り受け、その象を酔わして、ブッダに向けて突進させたのです。ブッダはその企てを知りながら平然と歩いていました。酔象はブッダを踏み潰すかに見えましたが、なんと、象はブッダの前で膝を折り、すっかり大人しくなってしまったのです。

この姿を目にした新王は、ブッダをなきものにしようとしたことを悔いあらためます。そのことを知ったダイバダッタは、こっそり城を抜け出るのですが、この時一人の尼僧と出会うのです。尼僧は、彼の行いを責め立てました。

その言葉に怒った彼は、彼女をなぐり死なせてしまったのです。これで彼は三つ目の大罪を犯してしまうのです。させるという、二つ目の大罪を犯してしまうのです。

「地獄へ」

いずれの企ても失敗に終わり、疲れ果てたダイバダッタは、とうとう観念して、ブッダに謝りに行くことを決意します。といっても、本当は謝る「振り」です。
疲れ果てた姿で、何人かの弟子に支えられ、彼はブッダのもとにやってきました。実は彼の十本の指の爪には毒が塗りこんでありました。
「師よ、兄、ダイバダッタが謝りにきたようです。ここに通しますか?」
と、アーナンダがブッダに言いました。
「アーナンダよ、彼はここには来られない。慢心、嫉妬、愚かさの炎に彼の身は包まれ、命が尽きることになるのだから」
今まさに、ダイバダッタが、ブッダに向かって飛び掛ろうとした時、地面に大きな穴が開き、悲鳴とともに彼は、堕ちてしまうのです。

その穴は地獄の底へとつながっていました。
人の妬みや憎しみは、大きな炎となって身体を焼き尽くしてしまうのです。ブッダを超えようとした弟子、ダイバダッタの悲鳴が地獄の底から聞こえてくるばかりでした。