第11話 トトロの岩屋にて
八重腰家の騒動も無事解決して日々の修行に戻ったんですが・・・ しかし、それにしてもお釈迦様の教えが全部で八万四千通りもあったなんて
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お釈迦様はこの世の中のみんなを救えるように いろんなタイプの人のためにいろんな道を説いて下さったんだなあ。 僕はダルマパーラン先生のもとで弟子入りして お師匠様が亡くなられて、途方にくれていたら 訳の分からない内にタイムスリップしちゃって 三択老師の元に入門することになったんだけど これまでに学んだ事なんてほんのわずかだもんなあ。 きちんとした立派なお坊さんになって沢山の人を救えるように頑張って修行しなくっちゃ!
・・・なんだけど、このところ老師様もお体の調子が悪いみたいでトトロの岩屋に籠もったきりなんだよなあ。
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大丈夫なのかなあ? あ、そうだ!今日は先輩のお坊さん達が大きな法要があってみんなお城に行っちゃったから、僕が老師様のお世話をするんだった!
久し振りに老師様のお顔が見られるなあ・・・
さーて、老師様のお食事も、お体を拭く為にお湯を沸かす道具も持ったしお着替えも用意した!
じゃ、出かけるかな。
しかし、この岩屋に向かう道、昼の内はまだいいけど ちょっと陽が翳ってくるとなんか不気味なんだよなあ・・・ でも頑張ろうっと・・・
だって今日は岩屋で泊まりで老師様の看病するんだもんな! 権助さんに習ったお薬の作り方も薬草も用意してあるし、 お鶴さんに作ってもらった老師様用の暖かいお布団も持ってきてあるしな。
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ふーやっと岩屋の入り口まで着いたぞ。
あれ?なんだ!岩屋の入り口から明るい光が漏れてる! 蝋燭の光なんかよりもうんと明るい光! なんだろう?
思わず息を殺してそーっと覗いてみました。
あ!!!!!!
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ととろの岩屋を覗いてびっくり!
あの真っ暗なはずの岩屋がどこから照らされているというのではなく、岩屋全体が光り輝いているんです。
その光の中で笑い声が聞こえます。 しかも老師様一人の声じゃないぞ??
目を凝らして老師様としゃべっている人を見ようと思うんですがまぶしすぎて相手の人の姿も老師様の姿もはっきり分からないんです。 勇気を奮い、一歩、もう一歩と奥へ足を進めました。
もう一歩もう一歩と進んでいく内に遂に老師様のすぐ近くまで来てしまったようです。
「おお、何じゃ、来ておったのか。さあ、そこへ座るがよい。」
あ、老師様、お客様ではなかったのですか?
「いやいや構わぬ。気にせずともそこへ座りなさい。」
僕は座り際にお客様の顔を見ようとしましたが、まぶしくて誰だかわかりません。
でも、何故か分からないんですがその人がすごく気になるんです。
思い切って老師様に聞いてみることにしました。
「老師様、お客様のようですが、あまりにもまぶしすぎてお姿がはっきり見えません。
どなた様ですか?」
「うーむ、おぬしには見えんのか・・・まあ、目で見ようとしても見えぬのだから
今のお前にはまだ無理かも知れぬなあ。」
「え?目で見えない・・・」
「そうじゃ、娑婆の人間ではないのじゃからなあ。」
「え...じ、じゃあ、幽霊!?」
「いやいや幽霊などではない。そうじゃなあ、お前ならば目には見えぬが声は聞こえるはずじゃ。」
「ええ、確かにさっき入り口の所で老師様とは違うお声をお聞きしたように思いましたが。」
「うむ、ならばわしに尋ねずご本人に尋ねてみよ!」
「ええ、尋ねてみよったって・・・お姿もみえないのに・・・なんて尋ねたら・・・ あ、あの初めてお目にかかります。どちら様でしょうか?」 んん?何かしゃべっているような気がするけど・・・これって声なのかなぁ・・・?
「おい、耳で聞こうとするな。聞くのではなく感じるのじゃ!」
「感じると言われても...」 ...初めての人を感じるって...?
「初めてではないはずじゃ。しっかりと感じてみよ!」
「うう...感じろって...確かに何か声が聞こえるような気はするんだけど... なんかわかんないけど・・・懐かしいような・・・ あああああああああ!!こ、この声!ひょっとして!!!!」
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「ピンダカ、久しぶりね。前に私言ったね、色、声、みんな目、耳とか インドリヤで分かるでしょ。 今、あなた、私の声、耳で聞いてない。でも声聞こえるでしょ? どのインドリヤ、声聞きましたか? それマノーインドリヤね。マナスで聞いたね。 マナス=こころ(意)ね。 私の声、心で聞くこと出来るでしょ? だからこのおじさん『感じなさい』ゆうたよ。」
この声!!このややこしい説明は間違いません!!!
「ダルマパーラお師匠様じゃないですか!!! しかし、それにしても老師様のことをおじさんっていうところを見ると・・・ お師匠様、老師様の名前聞くのも忘れてたんでしょ!」
「大丈夫ね、ダルマパーラン、聞くの忘れてたのも忘れてたから。」
「しかし、それにしてもお師匠様は死んだんじゃないんですか?」
「死にました。でも、それ体の話ね。 だから見るのむずかしなー。」
「いやいや、だからー、むずかしいとかじゃなく 普通、死んだら会えないじゃないですか!」
「会ってないよ、ピンダカ、今ダルマパーラン感じてるだけね。 ダルマパーランいる所、ピンダカいないね。 だから会わない、感じるだけね。 今のダルマパーラン、体がダルマ。分かりますか?」
「ううん、訳わからなさがパワーアップしてる! 老師様、死んだらおしまいじゃないんですか?」
「うむ、ならばおぬしに尋ねるが、お前はダルマパーランが死んで終わりでもよいのか?」
「いやです!老師様も大好きだけどお師匠様は僕にとってかけがえのない方なんです。 だから亡くなった時も悲しくって悲しくって・・・ ウェーン!もう会えないなんていやですよ!」
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「会えないけど、今、感じてるでしょ。 だからまた会えると思うね。」
「だから、お師匠様は黙ってて下さいよ!ややこしいんだから・・・ 僕は今、お師匠様と会えなくなって悲しんでるんだから静かにして下さいよ! ・・・・・・・・」
「おぬし、死んでしまったダルマパーランの声が聞きたくないのか?」
「そりゃ、聞きたいに決まってるじゃないですか!」
「ならば何故、願わぬのじゃ! だって、亡くなった人の声が聞こえるはずないじゃないですか 願ってみろ!」
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「うーん、お師匠様の声が聞きたいですぅ!」
「聞かせたいけど、ピンダカ黙れゆうから黙ってるよ。私、死んだから声聞こえないと思ってるでしょ。 だから黙ってあげてるね!」
「あ、そうかぁ。今、僕が黙れっていったんだっけ。 でも、亡くなったのにどうして聞こえるんですか?」
「聞こえてないのよ。私、死んだからダルマパーランの体、ダルマだけ。 だから、声聞こえないね。聞くじゃなくて感じるよ。 分かる?」
「分かんない~!! 老師様、僕は今まで生きるための修行をずっとしてきましたけど 死んだ後、どうなるか?ずうっと分からずにきました。 どうか、教えて下さい。」
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「あ、そうそうそのお体にいい薬、権助さんから聞いて作ってきたんです。 それにね、お鶴さんがふっかふかの綿で暖かい布団も作ってくれたんで使って下さいよ。」
「うーむ、しかしなあ、もうそれは必要ないんじゃ。」
「え、何でですか?」
「うむ時間がないんじゃ。」
「時間がないって・・・ そう言えば以前もこんな会話を経験したような気が・・・」
「そうそう、私の体終わった時と一緒ね。」
「ええ!?じゃあ老師様も!?」
「そうじゃ!」
「ええ!僕どうするんですか!」
「でも今度は大丈夫ね。」
「え?何で大丈夫なんですか?」
「会えないけど感じること出来るでしょ?」
「あ、そうか。でもそれそんなに簡単なことなんですか?」
「まあ、そうじゃなあ。心の修行なんじゃ。」
「え、どうすればいいんですか?教えて下さいよ!」
「今からか?」
「はい!」
「無理じゃな。」
「なんでですか?そんなこと言わずに教えて下さいよ!」
「時間、あと12秒しかないのよ。」
「ええ!!!」
「心配するな!後のことは...」 「そう後のことはね...」
「後のことは!?」
「ごめん時間きましたね!」 「ではな!」
「ええ!!?」
「バイナラ~」
そういうと二人とも火が消えるように姿を消してしまったのでした。
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